法律相談事例
離婚に関する相談
【婚約の破棄】
- 婚約を一方的に破棄されました。慰謝料を請求できますか。
- 婚約を破棄されたといえるためには、婚約が成立している必要があり、婚約が成立していれば、慰謝料を請求することが可能です。
どのような場合に婚約が成立しているといえるかですが、口約束だけでは相手が否定することもあり得ますので、両家で顔合わせをした、結納を行ったなど、客観的にも婚約していることがわかる状況であることが必要でしょう。
客観的にも婚約していることが認められ、婚約を一方的に破棄された側に破棄される理由がなければ、破棄した側に対して慰謝料請求が可能です。それぞれの事案によって、交際の期間、結婚に向けた準備の状況、婚約を破棄した側の言動等が異なるため、慰謝料の金額も事案に応じて異なりますが、数十万円から200万円程度となることが多いように思います。
また、精神的苦痛を埋め合わせる慰謝料とは別に、結婚式場のキャンセル料や結婚後に住む予定だったマンションの賃貸手続費用等を支払っていれば、別途損害として請求することも可能です。
【離婚の際に決める事項】
- 離婚するときにどのような事項を決めることになりますか。
- 離婚をするときには、主に①財産分与、②慰謝料、③年金分割、④離婚が成立するまでの婚姻費用、子どもがいる場合は⑤未成年の子の親権、⑥未成年の子の養育費を決めることになります。
【離婚手続の流れ】
- 離婚手続の流れはどうなっていますか
- ①夫婦の話し合いで離婚できる場合は(協議離婚)、役所に離婚届を提出すれば離婚できます。
②夫婦で話し合いができない場合は、調停で離婚することを考えます(調停による離婚)。現行法では原則として調停手続を経なければ離婚の訴訟をすることはできません。
調停は、男女2名の調停委員が間に入って、双方の話を聞きながら手続きが進められます。一方が出頭せず話ができない、あるいは双方の合意が得られなかったときは調停は不成立となります。
③調停が不成立となった場合は、訴訟により離婚を請求することになります(訴訟による離婚)。
【離婚までの生活費】
- 夫婦の関係が悪化して、夫が家を出て行きました。夫も私も離婚はやむを得ないと考えていますが、夫が生活費を支払ってくれなくなりました。夫に生活費を請求できますか。
- 離婚やむなしでの別居であっても、夫婦には扶養義務がありますので、夫に対して生活費(婚姻費用)を請求することができます。
夫との間で話し合いができない場合は、家庭裁判所に婚姻費用分担の調停を申し立てます。調停では、男女2名の調停委員が間に入って、双方から提出される収入に関する資料等をもとに、双方の話を聞きながら手続きが進められます。
一方が出頭せず話ができない、あるいは双方の合意が得られなかった場合は、調停で提出された収入に関する資料等をもとに、裁判所が審判で一定の金額を決めることになります。
【面会交流】
- 夫婦の関係が悪化して、5ヶ月前に妻が3歳の子どもを連れて実家に帰ってしまい、子どもと会わせてくれません。なんとか子どもに会いたいのですがどうしたらいいですか。
- 妻との間で話ができない場合は、家庭裁判所に面会交流の調停を申し立てます。調停では、男女2名の調停委員が間に入って、双方の話を聞きながら手続きが進められます。
調査官が同席することもあります。
面会交流が認められるかどうか、認められるとしてどのような内容になるのかは、面会を求めている親と交流することが子どもの福祉に資するかどうかという点が重要視されます。
そのため、父親と母親の話を聞くだけでなく、調査官が子どもが生活している場所に出向いて子どもの生活状況等を調査したり、裁判所内にある面会交流用の部屋で面会を求めている親が試しに子どもと面会交流をしたりすることもあります。
【民法上の離婚原因】
- 私は、現在、弁護士に依頼せず自分で離婚の調停手続をしていますが、このままだと合意に至らず不成立になりそうです。訴訟で離婚を請求する場合は、民法に定められている離婚原因がなければならないと聞いています。民法上はどのような離婚原因が定められているのでしょうか。
- 調停の場合は、合意に至ればどのような理由であっても離婚できますが、訴訟の場合は、以下の5つの原因に限られます(民法770条)。
①不貞行為
②悪意の遺棄
③3年以上の生死不明
④相手が強度の精神病にかかり回復の見込みがないこと
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由5つの原因についてもう少し詳しく説明します。
①不貞行為の典型例は不倫です。
②悪意の遺棄とは、正当な理由なく同居・強力・扶助義務を尽くさない場合をいいます。
③3年以上の生死不明とは、3年以上にわたって生死を証明できない場合をいいます。
④相手が強度の精神病にかかり回復の見込みがないといえるためには、相手が正常な結婚生活の継続を期待できない程度の強度の精神病にかかっていることが必要となりますが、夫婦には扶養義務があるため、強度の精神病にかかっているというだけでは不十分で、離婚に伴って療養・生活費に見合う財産分与がなされるか、近親者その他の者による引き取り体制があるか、離婚を請求する側が離婚後の元配偶者の生活に協力するか等の事情が考慮されることになります。
⑥その他婚姻を継続しがたい重大な事由とは、婚姻関係が破綻して回復の見込みがないと評価されるほどの事情がある場合です。身体的虐待、経済的虐待、性生活の不一致等が考えられます。性格の不一致のみでは認められないかもしれませんが、別居が長期間に及んでいる等の事情がある場合は離婚が認められることもあります。なお、訴訟の途中で和解する可能性もあり、その場合は調停と同様、上記5つの離婚原因がなくても離婚できる可能性があります。
【離婚に伴う財産分与】
- 財産分与の対象となるのはどのような財産ですか。
- 財産分与の対象となるのは夫婦の共有財産です。どちらの名義になっているかということよりも、夫婦が婚姻中に一緒に築いた財産と評価できるかどうかが重要です。
例えば、婚姻中に購入した夫名義の自宅は財産分与の対象となりますが、婚姻中に相続で取得した遺産は財産分与の対象となりません。なお、家庭裁判所で手続きをする場合は、離婚した日の翌日から2年以内に申立てをする必要があります。
【養育費の支払いの終期】
- 離婚調停中の妻から15歳の子どもの養育費の支払いを求められています。子どもが何歳になるまで養育費を支払うことになりますか。
- 民法には年齢に関して具体的な規定はなく、未成熟な子が独立の社会人として自立するまでということで、20歳に達する月までということもありますが、必ずしも20歳に限られません。
20歳前であっても、就職して経済的に自立していれば、養育費を支払うべき未成熟な子には該当しませんし、20歳を超えていても、専門学校や大学に進学している場合は卒業するまで請求できます。
子どもが15歳で将来どうなるかがまだわからない場合は、親の資力や学歴、家庭環境等を考慮して、子どもに大学進学の可能性がある場合は「大学に進学した場合は卒業する月まで」とすることが多いです。
【年金分割】
- 平成15年に結婚しましたが、会社勤めの夫と離婚調停の手続きをしています。調停委員から夫の扶養に入っていてパート勤めの私は年金分割を請求できると聞きました。
具体的にはどのような制度なのでしょうか。 - 年金分割制度には、合意分割制度と3号分割制度があります。
合意分割制度は、平成19年4月1日以降の離婚について、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を夫婦で分割できる制度です。
夫婦の合意または裁判所での手続により按分割合を定めます。年金記録の分割ですので、例えば按分割合を0.5と定めても、年金額の半分を受け取れるわけではありません。
3号分割制度は、平成20年4月1日以降の婚姻期間中の厚生年金記録を、第3号被保険者(厚生年金保険は共済組合等に加入している会社員や公務員に扶養されている配偶者で、原則として年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の方)の請求により、厚生年金記録を2分の1ずつ分割することができる制度です。
3号分割制度は第3号被保険者が請求すればよく、夫婦の合意は必要ありません。
合意分割を請求した場合に、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれていれば、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされます。
また、いずれの分割制度も、離婚した日の翌日から2年以内に請求する必要があります。
【離婚に伴う氏の変更】
- 夫と離婚したら私は旧姓に戻るのですか。私が子どもの親権者となれそうですが、離婚すれば子どもは私と同じ戸籍になるのでしょうか。
- 結婚したときに夫婦の姓として夫の姓を選択していた場合は、離婚により原則として妻は旧姓に戻ります。離婚後も婚姻中の姓を使いたい場合は、離婚から3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を市区町村役場に提出します。
親権者となって子どもを自分の戸籍に入れるためには、旧姓に戻る場合でも婚姻中の姓を使いたい場合でも、まず母親の新戸籍を作る必要があります。
親権者となっても子どもは自動的に母親の新戸籍に移るわけではなく、父親の戸籍に残ったままなので、母親の新戸籍に移すために、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立て」をする必要があります。そして、家庭裁判所の許可の決定が出た後に、市区町村役場で子どもを母親の新戸籍に入れる手続きをすることになります。