法律相談事例
土地・建物、隣人トラブルに関する相談
【隣地との境界の争い】
- 隣地との境界をあまり気にしていませんでしたが、自宅を売却をすることにしたので測量をしたいのですが、隣地の所有者に立ち会いを断られてしまいました。この先どうしたらよいでしょうか。
- まず、測量の専門家である土地家屋調査士が隣地の所有者に連絡し、説明と交渉を行いますが、隣地の所有者が納得しない場合は、法務局の筆界特定制度を利用することができます。
筆界とは、土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線であり、所有者同士の合意などによって変更することができないものです。
筆界特定制度とは、ある土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線(筆界)を現地において特定する制度です。土地の所有者として登記されている人は、対象となる土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の筆界特定登記官に対して筆界特定の申請をすることができます。
隣地の所有者が筆界特定の結果に納得しない場合は、隣地の所有者を相手方として裁判所に境界確定訴訟を提起することになります。境界確定訴訟では、当事者双方が主張・立証を行いますが、一般の民事訴訟とは異なり、裁判所は当事者の主張に拘束されることなく独自に境界線を定めます。
【共有不動産の分割】
- 親から相続した土地を2分の1ずつ妹と共有しているのですが、もともと妹とは仲が悪く、土地をどのように使うかについても意見が対立しています。この土地のことで頭が痛いのですが、どうにかならないものでしょうか。
- 分割の方法としては、協議による分割と裁判による分割があります。
協議により妹の共有持分を買い取ったり、妹と一緒に売却して売却代金を分2人で分けたりすることができればよいのですが、協議が難しい場合は、妹を相手方として裁判所に共有物分割請求訴訟を提起することになります。
裁判による分割は、①現物分割、②代金分割、③価格賠償があります。
①現物分割は共有物そのものを分割する方法です。本件では土地を2分の1ずつに分けてそれぞれが単独で所有することになります。
②代金分割は共有物を売却してその売却代金を分割する方法です。一般的には競売よりも任意売却の方が高額で売却できるので、判決となる前に任意売却で話を進めた方が良いです。
③価格賠償は共有者の誰かが他の共有者の持分を全て取得する代わりに対価を支払って分割する方法です。この方法は対価を支払うことになりますので、持分を取得する人に支払能力があることが必要となります。
【リフォーム工事の欠陥】
- 自宅のリフォームで業者に屋根の張り替え工事を依頼して、先日工事が終わりましたが、きちんと固定されていないところがあることがわかりました。業者にどのような請求ができますか。
- リフォーム工事は業者との請負契約に基づいて行われます。請負契約では、契約に適合していない部分がある場合は、業者に対して、修補請求権、報酬減額請求権、損害賠償請求権、解除権を行使することができますが、契約に適合していない部分があることを知ったときから1年以内に業者に通知する必要があります。
通知した事実を明確に残しておくために、内容証明郵便を利用するとよいです。
【借地上の建物の売却】
- 借地上の建物で父がお弟子さんと一緒に商売をしていましたが、父が亡くなり私が相続しました。
私は別のところに住んでいて地代を支払うのは負担です。私は、父のお弟子さんに商売を続けてほしいので、お弟子さんに建物を売りたいと思っており、お弟子さんとも話ができています。
このままお弟子さんにこの建物を売ってよいでしょうか。 - 借地上の建物を売却するときは、借地権も一緒に売却しないと建物を利用することができず、地主に無断で借地権を売却すると借地契約を解除されてしまうので、地主の承諾を得る必要があります。承諾するかどうかは地主の自由であり、地主に承諾してもらうために承諾料を支払うことが一般的です。
地主が承諾しない場合には、裁判所に「地主の承諾に代わる許可」を求めることができます。裁判所は、買い受けようとしている人が賃借権を取得しても地主に不利なおそれがない場合には、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡を必要とする事情等を考慮して許可するかどうかを決定しますが、承諾料の支払いが許可の条件となることが多いです。
【所有者が不明な土地の解消方法】
- 何回も相続があったのに名義が昔の人のままで、現在の所有者が不明な土地が全国にたくさんあり、管理がされず治安の悪化を招く等の問題があることから新しい制度ができたと聞きましたが、どのような制度でしょうか。
- 所有者が不明な土地を解消するための新たな方法として、①相続登記申請の義務化、②相続土地国庫帰属制度の創設、③民法の改正があります。
①相続登記申請の義務化は令和6年4月1日施行です。不動産を取得した相続人は、所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請を行わなければならず、正当な理由がないのに申請をしなかった場合には10万円以下の過料が科せされる可能性があります。
②相続土地国庫帰属制度は令和5年4月27日施行です。所有者が不明な土地の発生を予防するために、土地の相続人が不要な土地を手放して国に引き渡すことができる制度です。
③民法の改正としては、土地・建物に特化した財産管理制度の創設、共有制度の見直し、遺産分割に関する新ルール導入、相隣関係の見直し(いずれも令和5年4月1日施行)があります。
【相続土地国庫帰属制度】
- 父が山奥に土地を所有していますが、その父が亡くなり私と弟が相続しました。
私も弟も遠く離れた市街地に住んでおり、管理ができないので売却したいのですが、山奥であるため買い手がつきません。どうしたらいいでしょうか。 - 相続土地国庫帰属制度の利用が考えられます。
利用するには一定の要件があり、①通常の管理または処分をするにあたり過分の費用または労力を要する土地は利用できず、②土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金の納付が必要となります。
申請できる人は、相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限ります)により土地の所有権または共有持分を取得した人などです。
①通常の管理・処分をするにあたり過分の費用・労力を要する土地とされるのは、建物が建っている土地、担保権等の権利が設定されている土地、通路そのほか他人による使用が予定される土地、特定有害物質により汚染されている土地、境界が明らかでない土地その他所有権の存否・帰属・範囲について争いがある土地であり、これらに該当すると申請は却下されてしまいます。
②負担金については、宅地や田畑は一部の例外を除き面積にかかわらず20万円、森林は面積に応じて算定され、その他(雑種地、原野等)は面積にかかわらず20万円となっています(令和5年11月時点)。
【隣家からの騒音被害】
- 隣の部屋の騒音がうるさくて眠れない。騒音を出すのをやめさせるためにどのような手段をとることができるか。
- まず、①交渉によって任意の対応を誓約させることが考えられます。事前に騒音の程度を計測するなどした上で、受忍限度を超える騒音が生じていることを相手方に分からせ、誓約書を作成させます。当事者同士での話し合いが困難な場合やすでに行なったが功を奏していない場合であっても、弁護士名義の書面が到達すれば態度を改め交渉に応じる場合も多々あります。
交渉での解決ができない場合やそもそも交渉に応じてこない場合は、②裁判所に対して騒音禁止の仮処分の申請をして法的措置を講じるという方法が考えられます。
この場合には、その実効性を担保するために,裁判所の仮処分命令に従わない場合には相手方は1日あたりいくらの制裁金を支払わなければならないという、間接強制と言われる条項を付してもらうように求めます。これが認められれば相手方が行為をやめる可能性は高いと考えられます。
具体的にどのような手段がとれるかの判断に際しては,騒音の範囲や程度,安全に支障が生じている具体的な状況等の調査が必要となるため、弁護士にご相談ください。
【隣家からの木の枝の越境】
- 隣の家の木の枝が塀を越えて我が家の庭に入ってきており、枯れ葉が我が家の庭に落ちている。どうにかできないか。
- まず、①その木の所有者に、枝を切るように求めることができます(民法233条)。もし、相手方から自由に切っていいと言われた場合であっても、後のトラブルを予防するために、切る対象や処分方法、生じた費用の扱い等について定めた同意書面を作成しておきましょう。
木の所有者に対して枝を切るように催告したにも関わらず相当期間(一般的に2週間か1か月程度)が経過しても切ってもらえない場合、所有者やその所在がわからない場合、急迫の事情(木が倒壊して被害が生じる危険性がある等)がある場合には、自ら枝を切ることもできます(民法233条3項)。とはいえ、実害が生じていない場合に切断したりすると相手方から損害賠償等をされる可能性もあるため、原則的には木の所有者に枝を切除していただくようにしましょう。